水戸の美龍堂 からだ研究所の巴です。
毎年冬になると目にする「酉の市(とりのいち)」
商売をされている方は酉の市で熊手や縁起物などを買いに行ったことがある、という方も多いはず。
商売繁盛や開運に良いとは聞くけど、経営者向けなんでしょ?そもそも酉の市ってなに?どこでやってるの?買い方は?という事を、陰陽五行と合わせて伝えていきたいと思います。
酉の市の開催場所は茨城ならここ
酉の市は、主に鳥にまつわる神社で11月に行われるお祭りのこと。
一番有名なところでは浅草の鷲神社ですね。
おとりさまという愛称で慕われている神社です。
私は茨城に住んでいますが、茨城にもお酉様(おとりさま・おおとりさま)と親しまれる神社があります。
常陸鴻巣駅近くの「鷲神社」で、ここは西暦800年に建立されました。
浅草の鷲神社は1750年ころにはすでに酉の市では賑わいを見せていたという文献がありますが、茨城の鷲神社はさらに古くからこの土地にあったようです。
小さな神社ですが、ここは熊手を購入するとそのままご祈祷もしていただけます。
※気さくな神主様で、正面から撮っていいよ!と言われカメラをお願いした貴重なシーン。
酉の市の由来について知る
この酉の市の由来ですが、一説によると天岩戸がきっかけで始まった行事のようです。
天岩戸は、日本神話にも出てくる有名な出来事。
高天原の主、天照大神は弟の須佐之男の乱暴に嫌気が差し、天の岩戸に籠もってしまった。そのため、世界は闇に支配され多くの災いが起こった。
困り果てた八百万の神々は岩戸の間で宴を催すことにした。
天宇受売命が舞を踊り、皆が喜び騒いでいると外の様子が気になった天照大御神がすこし身を乗り出し天手力男命が腕を掴んで天の岩戸から引っ張り出し、この世に再び光が戻った。この時、その舞の音色を奏でた楽器を司った神様の弦の先に鷲が止まったので、この鷲を世を照らす瑞象を表す鳥であると祀り、鷲の一文字を入れた鷲大明神・天日鷲命として崇めました。
ここに神社をたてたのが、浅草の鷲神社でここが発祥の地だと言われています。
当時、浅草の鷲神社は東側に新吉原という遊郭があったそうです。
酉の市の日にはその遊郭内が開放されたといわれ、現在も盛大なお祭りが続く酉の市として名を残しています。
陰陽五行でみる酉の性質
陰陽五行でみると、酉は金の三合の壮。
金は巳に生じ、酉に荘に丑に死ぬ。
これを金の三合といい、巨万の富を築くと言われています。
酉は季節で秋。
実りを迎え、ますます栄えていくという発展のシンボルでもあるのです。
もともと日本では、先にお祭りなどでお祝いをして祈祷を捧げる風習があります。
お花見などもその流れをくんでいるそうですが、酉の市はまさにその前祝いのお祭りです。
11月に次の年の繁盛をお祝いするのですから。
熊手はどうして縁起物になったのか
酉の市といえば熊手が有名です。
この熊手を中心にして祭りが行われるのです。
露天に豪華な熊手がズラッと並ぶのは圧巻で、この姿を見にたくさんの方がくる人気の行事です。
日本武尊が古代中国東部へ征討の際に、戦勝のお祝いとして神社の松に戦いの道具である武具の「熊手」をかけてお礼参りをしたことが起源になっています。
なんでも、その日が11月の酉の日だったとか。
これが酉の市の始まりとされています。
それから酉の市は11月の酉の日に合わせて開催されるようになり、熊手はその手で福をかき集める(かっこめ)として、来年の幸せを願う開運、子孫繁栄、厄払い、商売繁盛のご利益があると言われるようになりました。
酉の市の熊手は、お多福や小判など金銀豪華なお守りが沢山ついています。
この熊手は、サイズが小さいものから両手サイズの大きいものまで売られていますが、買い方としては初めて買う時は一番小さいものからが良いそうです。
ちなみに高いものだとやはりサイズも両手で抱えきれないくらい大きく、お値段も何百万というものもあるそうですよ。
商売をされている方は、前年より1つ大きなものを、とだんだん大きい熊手を買っていくことで、あわせて事業も大きく繁盛していくと言われているので、是非試してみてください。
家庭に飾るという方は、飾りやすい置物タイプもありますよ。
こちらは神棚用ではなく、テレビの上やリビングの箪笥の上などに置くようなお飾りになっているそうです。
酉の市の縁起物
他にも、切山椒という縁起物も並びます。
こちらは山椒を粉にして、餅に混ぜたもので太めのうどんサイズに切られていて、この形は火事よけのため、拍子木に似せているという説もあります。
紅白、または五色の色を付けてあるものもありますがこれは地域によって様々です。
山椒が使われるのは、葉・花・実・樹脂に至るまで無駄がなくすべて利用でき、日本最古の香辛料で生薬の一つにもなっていることから風邪予防や厄除けとして人々の生活に根付いていたから。
そこから「切山椒を食べると一年間風邪を引かない」という意味を持つ縁起物として酉の市で並ぶようになりました。
縁起物としてもう1つ、唐の芋があります。
これは在来種であり、唐を頭と洒落て「人の頭にたてる」として出世や、連なって採れることから多産・安産祈願の縁起物として好まれてきました。
茨城の鷲神社では、七福汁として「ん」がつく7つの食材を使った汁物が振る舞われていました。
れんこん、南蛮、などが入ったもので、非常に体が温まりました。
酉の市は朝から夜まで長い時間行われるので、甘酒や汁物などで体を温めながら楽しみましょう。
特に酉の市は赤ちょうちんなどのライトが一斉に付くと圧巻で、可能であれば昼と夜と参加するのがおすすめです。
60日で一回りする日本の暦
日本の暦は、十干と十二支の組み合わせで60日で一回りするように作られています。
十干というのは、庚・辛など木火土金水が陰陽にわかれたもの。
十二支は子丑寅など毎年まわるものというイメージがありますが、暦では毎日変化しています。
11月に入って最初に酉がつく日を一の酉、次に二の酉。
三の酉がある年もあります。
ちなみに、この三の酉がある年は火事が多い、とも言われていました。
これも諸説あるようですが、酉の市=遊郭の開放ということで留守を守り夫の帰宅を待つ妻が、夫が早く帰宅するように「火事が起こる」などほのめかしたのではないか。と言う話があります。
酉の市の熊手にお多福(おかめ)がつくようになったのは、吉原の縁起にちなんだとされています。
熊手は酉の市で買うと縁起がいい
酉の市で縁起物である熊手を買い、新しい年を迎える。
鶏は朝の始まりを告げる鳥ですね。
江戸の頃にはそれが一般に普及していたことを象徴するように、「酉の市」は冬を表す季語として句に詠まれています。
新しい年がいい年になるように、願いが込められた言葉の一つ。
芭蕉の弟子の其角が詠んだ「春を待つ 事のはじめや 酉の市」や、樋口一葉のたけくらべの一説「此の年三の酉までありて」などが有名です。
日本人が昔から行っていた前祝いの風習。
今まで行ったことがなかった、という方はぜひ、今年は酉の市に足を運んでみてくださいね。